こんにちは。
京王・小田急多摩センター駅から徒歩2分のビルで鍼灸マッサージ院を開業している杉崎とも江治療室 副院長の杉崎 徹です。
当室のある多摩ニュータウンは、大学スポーツや高校野球部の練習グラウンドが多いことから、体育会系の患者さんが少なくありません。
今回は、一流のアスリートを目指す彼らにつきまとう【故障】や【ケガ】という問題について、20年以上前に出会ったエピソードと【今】を比較していきたいと思います。
ー 彼と、指導者
20年以上前の冬、真っ黒に日焼けした青年が初老の男性に伴われてご来室されました。
『この子、3日前に自転車に乗っていましてね。その時に前に停まっていたクルマが突然ドアを開きやがりまして、よりによって利き腕にぶつけられたんですわ』と。
それを聞いた院長と私は思わず『えぇ!それはかわいそうに。とんだ災難でしたね』と口を揃えました。
男性は続けます。
『実は明日大事な試合がありましてね、何とかこの子を出してあげたいんです。なのでマッサージで何とかなりませんか?』と。
私たちは、耳を疑いました。
時は平成初期。
当時のスポーツ界は昭和イズムが色濃く、精神論や根性論が根強い時代でした。
【靭帯断裂しても金メダル】【痛みに耐えてよく頑張った横綱】【痛いところがない日なんてないと言うJリーガー】が美徳として捉えられた時代です。
そうしたマインドは今、アスリートを潰す悪しき弊害と捉えられています。根性や我慢、経験論などという非科学的なモノに頼らず、データやスタッツに基づいた指導とトレーニングが当たり前となっています。
それと同時に、ケガを未然に防ぎ、ケガをしたアスリートを守り、健康にセカンドキャリアへ繋げることがスポーツ界のスタンダードでしょう。
そんな変遷を知る由もない当時とて、ケガからわずか4日後に試合に出そうとする指導者の気持ちは一切分かりませんでした。
とも江院長は、こう返します。
『私たちが出来ることは全部やります。それで治らないことも充分あります。ただね、そもそもこの子の将来を考えたら無理に出場させるのは良くないんじゃないですか?』
男性は答えました。
『いやね、この子も出たいと言ってるし、チームが勝つためにはこの子が必要なんですよ』
本音が、出た瞬間でした。
アスリートは誰しも勝利を求めます。
自己ベストを出したいし、ホームランやゴールも決めたい。その積み重ねが一流への道に繋がっていることも分かっています。
ただ、学生スポーツはその過程に過ぎません。一流になるためには成果が重要ですが、若いアスリートに最も重要なのは【健康にキャリアを積むこと】です。指導者は、成果を求めつつ学生を健康に育成する役割を担っています。
かの男性は【明日の試合に勝つこと】を目的に治療を求めていることが明白でした。それは、数年後もアスリートとして活躍しているかも知れない青年の姿を想像していないことを意味します。
所在なさげに黙ってやり取りを聞いている青年と、彼のためにと熱弁する指導者。
私たちは、それが残念でありませんでした。
あれから20年余り、学生スポーツ界はこうした悪弊から変わっているのでしょうか?
残念ながら、そうは思えません。
夏合宿と前後したこの1ヶ月あまりで、私が若いアスリート達から直接聞いた【指導者の言葉】をいくつか記します。
『痛くても走れ』
『腰が痛いのは弱いせいだ』
『メンタルが弱いせいだ』
『これで優勝したんだから従え』
これが現状です。
なんにも変わっていません。
私も昭和イズムを生きてきた人間なので偉そうなことを言える立場ではありません。
指導者の皆さん。
我々が教わってきたマインドや方法はやめましょうよ。もうそれダメです。
私のところに選手が来ないように、ケガをしないようなトレーニングを指導してあげてください。弱いのなら、どうやったら強くなるのか?を一緒に考えて、教えるまでが指導者の役割です。
それでもケガをしたら、適切に休ませて、信頼出来るクリニックや治療院をあなた自身で見つけて、医療に繋いでください。筋肉が強くなっても痛みは治りません。
学生スポーツ関係者の皆さん。
どうかアスリートのケアにも予算や時間を割いてあげて下さい。痛くなってからでは遅いんです。指導者は、きっとお金の問題で選手を守り切れないのです。
ケガをしたまま走らされ、痛みを訴えても休ませてもらえず、反抗したらレギュラーから外されるかも知れない…。
先輩の顔色を窺って無謀なトレーニングを強いられ、痛い脚をさすりながらチームメイトの活躍を観る選手を数え切れないほど診てきました。
チームのために、学校のためにと、選手の将来と健康を壊さないでください。
お願いします。
最後に。
件の指導者は、その業界では知らない人がいないほど有名な方ですが、彼の元からトップアスリートへ登り詰めた選手は数えるほどもいません。
黙ってうつむいていたあの青年を助けられなかった力不足と後悔が、今も心から離れません。
ご精読ありがとうございました。
杉崎とも江マッサージ・はり灸治療室
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(受付は午前8時30から)
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